愛のあいさつ




 ソフィーのいつもの生活といえば、朝起きて朝食を作り、ハウルを起こして(マイケルは大体勝手に起きてくる)彼の愛のあいさつを軽くかわすところから始まる。
 その後は朝食を家族揃って食べて片付けをして、家と店の掃除。ハウルが仕事へ行くのを見送って花畑へ。花を収穫して店に飾って、開店後はお店で花を売る。
 たまにマイケルに店番を頼んで買い物に行ったりもする。閉店後、ハウルの帰宅時間に間に合うように夕食の支度、帰ってきた彼の愛の抱擁をこれまた軽くかわして夕食、片付け、ちょっと一息ついて今度は裁縫に勤しむ。
「あんたはちょっとみんなに優しすぎると思うんだ」
 だらだらと文句を言うハウルの声を聞き流すソフィーは裁縫の手を止めたりはしない。
「というよりもあんたは僕にばっかり冷たすぎる。おかしいじゃないか。僕はあんたの夫なのに」
「ハウル、私は忙しいのよ」
「知ってるよ。でも仕事で疲れて帰ってきた旦那さんを労ってやる暇くらいあるだろう?」
「残念だわ、私にはそんな暇も無いの」
 最近繕い物が多いのはどうしてだろう。マイケルが魔法を失敗したせいだと気付いて思わず苦々しい思いになる。そしてその魔法が失敗することになったのはハウルの出した課題が間違っていたからだった。元を正せばハウルのミスじゃないの。しかしあくまでそれに気づかず失敗してしまったのはマイケルなのだ。
「それは納得がいかないね!」
 ハウルは無理やりソフィーの膝に頭を乗せる。今までそこにあった布きれや服はすべて脇にどけてしまった。
 どうにもソフィーの苦々しい表情が少し誤解を生んでしまったようだった。
「ハウル!」
 ソフィーはどうにかしてハウルをどかそうとするけれど、彼はソフィーの腰にがっちりと腕を回してしまって離さない。
「ちょっとハウル!どきなさいよ邪魔じゃない!」
「邪魔!邪魔と言ったかい!ああ、僕は世界一不幸で恵まれない男だよ!仕事は厄介だし最愛の妻は僕を邪魔者扱い!どこにも僕の居場所なんか無いんだ、何たる悲劇!」
 その芝居がかった台詞を膝の上で騒がれるこっちの方が何たる悲劇、だ。
「あんた一体何がしたいのよ!」
 さっきから裁縫の邪魔をしていきなりベタベタしてきて。せめて他の時ならもう少し我慢できたのに。
 ああ、針は平気かしら。刺さったりしてないかしら。何かの弾みでケガでもしやしないかしら。
「何がって?もちろん決まってるじゃないか」
 ハウルがようやく体を起こす。ソフィーはその隙に裁縫道具諸々を片付けてしまう。
 これでひとまず安心だ。
「あんたを、僕だけのものに」
 柔らかい唇に触れると、ハウルは絶句したソフィーを抱え上げてしまう。この細い腕のどこにこんな力が、となんだか的外れなことを考えながらソフィーはうつむいた。
 耳まで真っ赤だよ、耳元で囁かれた一言に思わずアッパーカット!
 それでもめげない旦那様は嬉しそうに笑う。



 




 *POSTSCRIPT*
 日記で書いた小ネタの使いまわしで申し訳ない。っていうかすごいよねちゃんとハウルが攻めてるよ…!(驚愕)



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