ボーダー



  ここからここまで。
 彼女との間には、曖昧なるボーダーライン。
 例えば振り向いたとき。
 すみれが仮眠をとっている。その寝顔をついつい見てしまっても、動揺してはならない。というか、動揺してもそれを見せてはならないのだ。例え他に誰もいなくても。
 理性バンザイ。寝不足にも関わらずがんばってるぞ自分。
 無駄な努力だ。
  悲惨な自覚。
 罪深い彼女は彼の心境も知らずに寝こけている。
 溜め息は空回りするばかり。
「ん…」
 そういうの反則だよすみれさん。
 無意識の行動を責めるわけにもいかず、またまた大きく溜め息。
「幸せになりてえなあ」
 どうせなら、この寝顔を毎日拝める幸せを。
 そう思っても、自分から何かする勇気もない。
 情けねえなあ。
 ひとりごちても、聞こえるのは甘美なる寝息。
 我慢なんてしたくない。
 我慢しなくちゃ殺される。
「……すみれさん、寝てる…よね?」
 彼女は気づいてませんから。


 どうか、あと少しだけ、目を覚まさないで。


 衝動というものは走り出したら止められないから。
 言い訳を頭の中に浮かべつつ、その白い頬に触れる。(これはいつもなら反則)
 唇に、柔らかい感触。これほど蕩けて良いものか。(これももちろん反則)
「……好きだよ」
 彼女の目を見て、けして言えないセリフ。(情けねえなあ)


 ここからここまで。
 曖昧なるボーダーライン。
 そのすべらかな頬に触れるのは反則。
 その熟れた口元を塞いでしまうのも反則。
 冗談混じりの告白はセーフ。
 今度そばで油断されたら、寝込みを襲ってしまうかもしれない。
 物騒な気分で、今日もまた机に向かって溜め息を吐く。




 




 *POSTSCRIPT*
 なんか物騒なことになってますが。
 生々しいとこつくとやっぱり物騒にもなるんじゃないかと思って。 



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