glitter paradise 「はじめまして」 その男は黒髪黒目で、東の血が混じっているように思われました。顔立ちも確かに私たちとは違った。そんな人が何故ここに、と思ったものの、例外、という言葉がふっと頭の中に浮かんだので納得することにしました。それ以外には考えられないからです。 「はじめまして。ヘル・マスタング」 礼をすると頬に髪が少しだけ垂れました。私の髪は金色です。忌まわしいだなんてことはけしてない、すばらしい色であるということになります。今のこの国では。 「驚かせて申し訳ありませんフロイライン。本日はおじい様に招かれまして」 「ああ、そうだったんですか。話には聞いておりました」 わたしの祖父は軍人です。父も軍人でした。代々軍人の一家です。この世界で生き抜くのに、こんな有利なことはありません。わたしも軍人になりたかった。射撃くらいならばできます。けれど実戦に出ることはけしてできない。 「けれど、わたしはもうフロイラインなんて歳ではありません」 こればかりはとても気になりました。特に彼に『フロイライン』だなんて呼ばれることにはとても抵抗がありました。どうしてかわからないけれど、とても。 「それはそれは。けれどあなたは充分『お嬢さん』ですよ」 第一印象は最悪でした。そんなことを言われて喜ぶ女ばかりだと思っているのでしょうか。 「あなたも軍人ですか?」 「お話はお聞きになっていらっしゃるんでしょう?」 くすくすと笑いながら彼は言う。 「貴方の口から直接聞いてみたいのです」 「これはこれは。勇猛なお嬢さんだ」 「勇猛?」 「ええ、未婚のお嬢さんが、あまりに馴れ馴れしいものですから」 「不愉快ですか?」 「大歓迎です」 「気の置けない人ですね」 「ええ。そうなんです」 「それから、嘘がお上手。本当は嫌いでしょう?」 「何のことでしょうか」 彼は多くを語ります。けれど本当のことは語りません。何のためなのかを、わたしは知っています。祖父はわたしには饒舌なのですから。そして、わたしに彼の助けとなるように申し付けたのですから。 「いずれ直接お聞かせいただきます。ヘル・マスタング、こちらへどうぞ。おじい様がお待ちです」 わたしは長い廊下を歩き始めました。赤い絨毯ときらびやかな照明があまりに目に痛い。いつもそれをとても不愉快に思います。きっと祖父もそう思っています。そして、彼もきっと。 「フラウ・リザ・ホークアイ」 わたしが振り返ると彼は言いました。 「あなたとは良いお付き合いができそうです」 こちらこそ、どうぞよろしく。 わたしはできる限り不敵に微笑みました。彼はそれに満足したのか、踵を返して玄関に向かいました。 |
*POSTSCRIPT* 映画版で現実世界っていうから、あれだ、きっと打倒ナチスとかなんだろうなって思って。大佐の外見じゃとても軍人になれないんじゃないかと思いますがね。まあそこはフィクション。あれ、でも親衛隊とかじゃないから平気なのかな。もう覚えてないや詳しいところは。女が軍人になれるわけはないのでリザちゃんにはお嬢様になってもらいました。 |
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