二人独りで




 書類の整理を終えると彼が手招きをしたので私は。
 これから起こることを何とはなしに悟り、嫌々ながらも彼の下へ向かう。
 そしていつものようにまず彼は私の手をとった。
 優しい快楽への準備段階。彼は手順を踏むのが意外にも好きだ。
 彼の手は相変わらず冷たい。
 冷たい手の人は心が温かいそうだ。じゃあ私は冷血漢ね、皮肉にそう思う。
「中尉」
 名前で呼んでみればいいのに。
 今の私ならば注意することもできずに流してしまう。答えてしまう。
「なんですか」
「・・・香水変えたのか」
「いいえ?」
「ならいい」
 本当は変えたけれど。そんなことは教えてやらない。
 手の甲にキス。
 手は冷たいくせに唇は温かい人。
「いいのか?」
「聞くことですか?」
 いいや、彼は小さく呟いた。
 そういう彼はうつむいていたので、まさか泣いているんじゃないかと思った。
 泣けばいいのに。
「寂しそう」
「誰がだね」
「大佐です」
 寂しそう。
 腕を引かれて、座っている彼の腕の中に引きずり込まれる。
 ふわりと彼の匂いがした。その匂いに不覚にも安心してしまって、静かに目を閉じる。
 その瞬間が、恋しくて。
 苦しくて。
 逃げたくて。
 切なくて。


 二人でいるのにどこまでも独りな気分に突き落とされたのは、どうして。
 (知っているんじゃないの。つい呟くと彼が私を抱く腕に力をこめた)


 どこまでも独り。
 泣くことも出来ない。  



 




 *POSTSCRIPT*
 ロイアイ。中尉視点で。
 あたしのロイアイ文の中では異色作なのではないかなとか。
 でもなんか最近こういう文章ばっかり書いてる気がする。
 あーすごい痛くて重くて泣きたくて愛しい感じの文が書きたい(到底無理)



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