息も絶え絶え




「ねえソフィーソフィーソフィー!」
 いつも通りに三回連続ソフィーが城中に響き渡った途端、ハウルは料理をしているソフィーの背中に飛びついた。
「きゃあ!」
「ソフィー聞いてよ!」
「何よあんたは!危ないじゃない!」
「だって!今言わなきゃいけないんだ、絶対!」
 あんまりに真剣な目でそんなことを言うものだから、ソフィーは少しだけ迷うものの素直に鍋をカルシファーに任せることにした。
 ハウルは満足そうに頷いて、ソフィーを椅子に腰掛けさせる。
「で、何があったのよ」
「あのね、何だか僕病気みたいなんだ」
「………」
「………」
「はあ?」
 目をきらっきらと輝かせて言う言葉が病気とは。ソフィーにはまったくふざけているとしか思えなかった。
「あんたが病気?二階から駆け下りてきたりあたしに飛びついたり料理の邪魔をしたり仕事をサボったりするあんたが病気?」
「何で仕事サボったの知ってるのさ…」
「あらそうだったの。初耳よ?」
 にっこり笑うソフィーに背筋が寒くなった。
「いやあの本当に今日は調子が悪くて」
「そうねえ病気だものね。仮病っていう」
「違うよ!本当なんだ!心臓がどきどきして苦しくて顔が赤くなっちゃうんだよ!」
「そうなの?なんともなさそうだけど」
「ああ、今あんたとこうやって話してるだけでも僕の胸ははちきれそうだよ…それからね、ソフィー、あんたがやたらきらきらして見えるんだ。他の誰よりも何よりも、一番すてきなものに見える」
「………」
 ぼっと音を立てそうな勢いでソフィーの顔が真っ赤になった。
「あ…あんた何なのよそれ…!」
「ねえ、これはもしかしたら恋わずらいってやつじゃないかな?あんたのことを考えるだけでもう死にそうになるんだ。ソフィーは?ソフィーはそんなことはない?」
 あまりのことにソフィーは俯いてしまって、顔を上げようとしない。今このときが一番心臓もどきどきして、胸が苦しくて、顔も熱くて。息も絶え絶え、死んでしまいそうだというのに!
「…あたしもそうよ。だってしょうがない――」
 言い切る前にハウルはソフィーの唇を塞いでしまって、今日の料理はカルシファーにどうにかしてもらうことに決めた。 





 *POSTSCRIPT*
 旦那さんは満足気に笑う、と。
 ええいバカップルめー!



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