日記に書き散らかした小ネタ集 よろず版1
   ひとみをしらない (BREACH ギン乱)


 あの流れ星に祈って。そうすれば願いごとが叶うのよ。

「それはだまされたんや」
「違うわよ。だって願いごとしてる人を見たもの」
「でも願いが叶うところは見てへんのやろ?」
「それはそれよ。祈って願いが叶えばもうけものじゃない」
「乱菊、楽をしようと思ったらあかんよ」
「でも…」
「乱菊の願いごとはぼくが叶える。だからなーんにも心配しないでいいんや」
 それこそあたしをだます気ね、言ってやろうかと思ったけれど言えなかった。そしたらギンは証拠を見せる。何を言っても、どんなことをしてでも、証拠を見せる。それはあたしにとってはとてもとても残忍で恐ろしくて快くて気持ち悪くて、耐えられそうもなかった。

 ねえ、さよならのときにだけあんな顔するのは卑怯よ。卑怯だわ。
 あの飄々とした瞳が濡れるところなんて知らない。あの嘘くさい言葉の端々から滲み出る本音ばかりに気を取られてしまったから。夜闇に紛れる黒い服なんてものがなければよかった。そうすれば、もしかしたら少しの余裕が生まれたかも。
 すべては悲しい仮定にしかすぎないけれど、それでも求めるものは今も昔も変わらないのだ。
 ふたりでいられればそれでいいの、ほんとうは。


   しとり ほろり (オリジナル)


 このまま死んで、あたしのかけらがこの世に一つも残らなければいいのに。
 お風呂の中は湿気に充ち満ちていて、さっきまで乾いて掠れていた声も余裕で回復した。
 夜。
 夜に泣き叫ぶのはもうやめよう。
 隣りの部屋から壁叩かれるし大家さんは嫌味を言うし友達からは馬鹿にされる。泣きたくても我慢しよう。我慢しよう。泣きたいけど。
 どうしようもなく涙が込み上げてくるということはよくあることで、それは寂しくもあり嬉しくもある。
 あたしは基本的に自分が苦手なのだ。
 白いバスタブも苦手。それの中にお湯をたっぷり張って、鼻の頭まで沈むのも苦手。手足を思いきり伸ばすのも苦手。お風呂に入ってるときに頭の上から落ちてくるくちづけなんてものは、一番苦手。
 あたしが泣くのに理由なんかないのよ。ただあなたがいとしいだけで。


   舌の先からしのびよる (BREACH ギン乱)


 みるみるうちに膨れてしぼんで。
 欲望なんてものは満足させてやればそれでおしまいだ。あっけない。つまらない。
「男に幻滅するにはまだ早いと思うのよ」
 昔、色々なことを自覚する前はそんな話もした。今考えると笑いごとじゃない。
「夢は見たいじゃない」
 甘いものが好きだった。学院に入る前は口に含むことも、見ることさえままならなかったから。それはギンにしても同じだったようで、彼と一緒に甘いものを食べた。
 口が滑ったのもそんなときで、機嫌が上向いていた分降下は激しかった。
「乱菊が男の何を知っとんの。誰かに教えてもらったん?」
 空気が冷たかった。
 いつもと同じ顔でいつもと同じ手で、言葉の抑揚さえ何一つ変わらなかったけれど、怖かった。
「誰って…」
「誰?」
「誰でもいいじゃない」
「よくない」
 その口の奥、舌の先から得体の知れないものが這い上がってくるような感覚。
 手を無防備にテーブルの上にのせていたせいで、たやすくその手は絡められ逃げることはかなわない。
「ギン…」
「誰?」
 誰でもないわ。
 誰でもないわ。本当よ。
 その一言が出なかった。
「…乱菊は男に希望なんか持たん方がええよ。ずっと。男見下して笑うとけばええんや」
 ギンはあっさりと笑って、何でもないように装うけれど、そうでないことはすぐにわかった。
「なあ乱菊。悲しい?」
「…あんたが一緒だから、悲しくなりようもないわよ」
 ギンはさも当然そうに笑った。

 だからね、ふしあわせなさよならなんて要らなかったのよ。
 その想いは狂気にも似て。


   いたいのはあなたのせいよ (BREACH ギン←乱)


 寝苦しくて飛び起きる夜がある。たまに夜だけに飽きたらず昼も、ということがあるがそれは稀だ。
 そういう時に見る夢はいつも同じで嫌になる。
 あれは子供のころの大切な思い出でも何でもなくて、飢えと貧困と孤独の記憶だ。二人きりだからこそ孤独だった。どんなにお互いの肌を合わせても抱き合って眠っても、その恐怖はおさまるところを知らない。
「あんたのせいよ…」
 痛いのも苦しいのも寂しいのも、全部あんたのせい。
 なのに何故どこまでも愛しいのだろう。
「あんたのせい…っ」
 ああ、また行ってしまうのね。帰ってはこないのね。


   きみをつれていく (オリジナル)


「学校行きたくない」
「じゃあやめれば」
「勉強したくない」
「しなきゃいいじゃん」
「生きていたくない」
「死ねば?」
「簡単にほいほい言うよね」
「簡単でしょ」
「簡単だけどこう、友達ならもうちょっとなんとか」
「言ってどうするのさ。きみ結局逃げたいだけでしょ」
「まあね」
「じゃあ黙れ」
「あー…夏って死にたくなる」
「人の話聞いてました?ねえ聞いてくれてました?」
「うっさい」
「きみがうっさい」
「ねえ一緒に逃げようよ」
「どこまで」
「どこまででも」

「お断りです」


   夜の底 (Landreaall DX)


 熱を出してうなされている時のことだったのだと思う。記憶はやたらに鮮明で、頭の中の映像も音もすべてが色鮮やかだった。世界はこんなに生きていたのかと思わずにはいられなかった。
 見ていたものは夢だった。平和な世界だった。マリオンがいた。イオンがいた。六甲がいた。父さんと母さんがいた。みんなが笑っていた。自分も、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。望んでいたのはこれだったのかなとぼんやりと思ってみたけれど、現実というのはうまくいかないものだ。
 目が覚めて夢だったのを知ったときは少なからず落胆した。あの後へこんだ理由は夢が現実にならなかったことと、マリオンに振られたこと、二つだった。 
 ねえマリオン。今俺はしあわせだ。とても楽しい。友達もできた。イオンも楽しそうだ。六甲にも秘密ができた。これはすごいことだと思う。今まで君のことしか見ていなかった気がするけど、世界はほら、こんなにも広くて綺麗だ。君の目は見えないけれど、君はそれを知っていたんだ。俺は結局パンも食べるし死にそうになったけど元気に生きてる。人は強かだ。
 けれど時々どうしようもない気分になる。暗い夜の底に沈んでいくような、周りに誰もいなくて一人ぼっちになってしまったような、そんな心許ない気分になる。大切なものが一つ増えるたびに恐怖が増す。昔はこんな風に思ったことがなかったのに。君がいなくなることだけが怖くて怖くて仕方がなかったのに。恐怖は無理やり押さえ込む。本当に時折、それが我慢できなくなるときもあるけれど、今のところは何とかうまくやってる。これからどうなるかわからないけれど、それでもきっと何とかするしかないんだ。
 マリオン、君に声が届いたら俺は弱音なんか吐かなかったよ。
 だからきっと、俺が破綻する日は来ない。


   アルフレドの指 (オリジナル)


 アルフレドが私の部屋にやってきた日のことはよく覚えている。ひどい雨が降っていて、彼は大きな荷物を持っていた。それはやたらに重くて、けれど彼はそんな素振りを欠片も見せずに私の部屋に乗りこんだ。そこには一瞬のためらいすら滑りこむ隙はなかった。きちんと靴を脱いで(玄関の古くて汚いスニーカーは意外にもしっかりと揃えられていた)清潔そうな靴下に包まれた強靭な足で一歩一歩踏みしめる度に床は小さくぽとりと鳴った。そして彼は濡れた上着を脱いで荷物をテーブル横ソファの前に置くと、彼自身もソファに座って、今まで私が見ていたテレビを一緒に見始めた。彼の行動があまりにも自然で私はただ呆然としてしまった。
 彼は何も喋らなかった。一言も。それに反して私はやたらに捲し立てた。「何してるの」とか「どうしてうちにきたの」とか「警察を呼ぶわよ」とか。すべてに無言で返されて、更にじっと見つめ返されてしまったのだ。どうにもできるわけがない。見つめ返される度にめまいがした。
「さやかはどうしたの」
 私は妹の名前を挙げて彼をにらんだけれど、彼はそれにも無言でただテレビを見つめていた。面白くもないドラマをさもつまらなそうに。彼は的確な男だった。
 ――知らない。
 彼は一言だけ呟くと、もうそれきり喋るのをやめた。
 二人分の体重を受けてソファがきしむ。
 彼は、背丈こそ私より10センチ高い程度だったけれど、広い肩とかごつい手だとか余分な肉の無い頬だとか、そういう男性的なものの持ち主だった。目が大きめだったから小さいころはさぞ可愛い少年だっただろうとか、この人唇が薄いわだなんて呑気なことも考えてしまった。何しろ私は混乱していた。けれど、その混乱を少し吹き飛ばしてしまうほど、彼は非現実的だった。
 思案した挙句に警察を呼ぼうと思ったけれど、警察というものは随分私から離れたところにあったもので、電話するには度胸が要った。第一彼のことをまったく知らないわけではないというのが問題だった。
「ねえ」
 呼びかける私に彼はそのとき初めて表情を動かした。薄く笑ったのだ。諦めたように、けれど皮肉に。
 彼はそれから一言も喋らない。
 三ヶ月が過ぎた今になっても。

 あなたの名前はアルフレド。だから勝手に決めてしまった。彼を見知ってはいても名前すら知らなかったことに自分で驚いた。彼は何も言わずにアルフレドと呼ばれたら顔をあげたし笑った。だからこれで良かったのだろうと思う。なにしろ私は少しばかり気が違っていたのだ、きっと。名前も知らない他人の男を部屋に無条件で置いてやろうと思うくらいには。
「筆談くらいはしてもいいんじゃない?」
 紙を差し出すと彼は嫌そうな顔をした。それが三ヶ月目のこと。
「黙ったまま居座られる方が嫌よ」
 紙とペン、それからその隣にはアイスコーヒー。もうすぐ八月になってしまう。
「さやかと話したわ。別れたんでしょう?」
 三ヶ月の間何もしないわけにはいかなかったので妹に電話をした。そうしたら別れたから知らないわ、とそれだけ返されてそのまま受話器を置く音が聞こえた。わがままで自分のことしか考えていないかわいいかわいい私の妹。
 彼は溜息をついて頷いた。ようやく得られた反応に顔がほころぶ。
「…どうして私のところに来たの」
 彼は紙を丸めてゴミ箱に捨てた。そしてペンをとると、私の腕に一言。
『おねえさんだから』
 と、汚い字で書きなぐった。
 反射的に平手を食らわせてしまったとしても無理はないと思う。
 真っ赤になった彼の頬に笑いがこみあげてきた。残酷な笑いでも何かおかしかったわけでもなくて、そうするしかなかったのだ。
 彼は溜息が多いのを私は知っていたので、今までで一番深い溜息をついたそのときも何も思わなかった。

 彼は消えた。もうすぐ八月、暑さにやられてしまいそうだった。


 ソファの上に居るはずのない男の姿を認めたとき、本気でめまいがした。
 夢じゃなかった、夢じゃなかった、夢じゃなかった!
 彼は起こすのがはばかられるほどぐっすりと寝ていた。気楽なものだ。夕べ急に転がり込んだ男のすることとは思えない。気づかれない内にこっそり出て行くというような気の利いたことができないものか。
「おはよう」
 ソファの上から彼を蹴落とすと彼はぼうっと身を起こす。低血圧なのかもしれない。なんて厄介な。思わず舌打ちしてしまった。
 彼は口だけで「おはよう」と言った。そこまでするなら素直に声を出せばいいものを。
 彼の考えてることはさっぱりわからなかった。前に話をしたときもさっぱりわからなかった。そのときの彼はやたらに喋る男だったのだ。
「今日は出て行ってもらうわよ。昨日は夜中だったからともかく、今日は置いておく義理は無いわ」
 彼は黙ってそれに頷いた。
「荷物まとめて。丁度いいわ。今から仕事に行くから一緒に出て」
 が、それには顔をしかめる。
「何よ。不都合でもあるの?」
 彼が顔を横に振るのは早かった。
「じゃあいいじゃない」
 また、すぐさま首を横に。
「どうしてよくないの」
 いらついた。喋らないこの男にもだが、それに根気良く付き合ってやってる自分に一番むかついた。
「少しは喋りなさいよ鬱陶しい!」
 彼は無言で時計を示した。気をそらせるためか否か。ただの親切心でやってもらいたいことではない。時計の示す時刻は遅刻直前のあまりよろしいものではなかったので、行かないわけには行かなかった。今日は貴重品の類を持ち歩くことになりそうだ。わたしはこの男を信用しているわけではない。むしろ疑っている。もしも彼がわたしと深い付き合いでないのをいいことに空き巣でもしたら悔やんでも悔やみきれない。警察に届けてもどうせ引き込んだのはわたしということになってしまうのではないかと思う。もし本当に疑ってかかっているなら昨夜のうちに追い出せば済むことだし、何かあったならもうすでに事が起こっているに違いないからだ。
 わけがわからなかった。どうしてここまでして。
「…わかったわ。あたしが帰ったら出て行って。それまでどこにも出かけないでここにいて。電話がかかってきても誰かが訪ねてきても出ちゃだめ。ただここにいて」
 合鍵を渡すような恐ろしい真似はできなかった。
 それがいけなかったのかもしれない。そんなこんなでかわされ続けて一週間、そろそろ自分がただのアホに思えてきたころ、彼は手のひらに文字を書くようになった。


(未完につき随時書き足します)




 目を閉じるとひかりの筋が縦に三本。それは段々と細くなって一本になり、最後には消えた。そのまま眠りに落ちるのは簡単だったけれど意識はやけにはっきりしていた。面倒なことに。どうせならばそのまま意識も失って心も失って感覚なんてものすべてが無くなってしまったら世界は簡単なのに。
 このまますべて失ってこの体はただ内臓がどくりどくりと動くだけの肉の塊になってしまって知らない内に病院のベッドに寝かされて何がなんだかわからないコードやチューブや機械がとりつけられて、いつの日か忘れ去られるか誰かの臓器になるか、それだけのことだったらいい。煩わしいのは嫌いだ。
「暇で暇でどうしようもないと考えることも倦んでくる」
「それはよろしくない」
 足の先の感覚が無い。変な座り方のせいで痺れてしまったのだろう。じんじんと響くようなびりびりと突き抜けるような。
「どうしたらいいのかしらこういう場合」
「どうもしなくていいんじゃないかこういう場合」
 今度はひかりが大きな水玉を描いて落ち着いて消えた。世の中なんてクソッタレだ。


   誰も知らないところまで (プライベートアイズ 浅見×碧)


 手を繋ぐとか、軽い気持ちで抱きしめるとか。そういうことが簡単にさらっとできたのは小さい頃の話で、しかも小さいころといっても年下が二人ほど身近にいたおかげでお互いかなり早熟だったから、実際はそんな時期も余裕もさっぱり無かった。
 考えてみればこういったことは今までなかった、浅見は思う。まったくといっていいほど無かった。それは自分が何もしなかったせいでもあるし碧が鈍感なせいでもあるに違いない。悪いのは誰か、きっと二人だ。
「あのー…碧さん?」
「なぁに?」
「いやなぁに?じゃなくてだな、お前一体どういうつもりだ?」
 この胸の中に力なくよりかかってくる碧の肩に手をまわすか否か、浅見は少々葛藤しつつ、結局中途半端に空を切った腕は下ろされる。
「つもりも何も。たまには甘えてみようかと思って」
「嘘つけ意地っ張り」
「サギ師が人のこと言えるのかしら」
「俺はサギ師じゃないってお前何度言ったら…」
 碧は浅見の手を取って自らの頬に触れさせる。やわらかかった。何年ぶりだろうかこの感触。自分は耐えた。ひたすら耐えた。よくがんばった。
「……勘弁してくれ」
「嫌ならやめるわ」
 碧はそう言うと手を離す。結局は意地っ張りなのだ。甘えると言ったくせに。
「…嫌じゃない」
 浅見は結局碧の肩に手を回した。迷うくらいならやってしまえばいいのだ。そうすると碧は顔をそむける。自分で仕掛けておきながら自分で照れるとは何て器用な芸当だ、浅見は思うけれども、その気持ちはわからなくもない。いっそのことこうしてしまえばいいと何度思ったことかわからないのだ。今まではそうだった。きっとこれからもそうなんだろう。
「もうすぐ卒業ね」
「そうだな」
「前々から思っていたのだけど、どうする気なの?学歴」
「…は?」
「若君が共学にすると言ってもそれは先の話だし、早くても来年でしょう。浅見女子高卒の男になっちゃうわよ」
「………」
「まさか今気づいたの?」
「――…社会に出たくない…っ」
 浅見は碧の肩に顔をうずめてみた。女の体というものはやわらかくていい。心地よいのは当然、好きな女ならなおさら。
「一緒に逃げてあげましょうか?」
「は?」
「誰も知らないところまで。一緒に」
 上から降ってくる声がなんとなく震えているのに気づいて浅見は目を閉じた。人の体は熱をもっているからすばらしい。その熱はまぎれもなく求めてやまないものなのだ。
「そうだな、いつか」
 誰も知らないところまで、逃げて逃げて逃げて。
 そうしたらまず、手を繋ごう。




 欲望の果て 最上階の悪徳 狂態にうねる焔
 怠惰 恐慌 破壊 狂気
 爪を立て縋りつき涙を流せ
 とろけそうな熱に歪み壊れ狂え
 涙を流したナルキッソス
 サディスティックに足をとられる
 その肉の穿ちに何がある
 くわえこめくわえこめくわえこめ


   ワンダー (プライベートアイズ 浅見×碧)


「愛してるってどうやって言うか知ってる?」
 いきなりそんな爆弾じみた発言をされて冷静でいられた自分はちょっとすごいと思う。
「は?」
 見事冷静な切り返しだ。何故なら誰だってそう言うに違いないから。
 ここで愛の意味を昏々と語るような怖い奴にはなりたくない。
「だから愛してるって、どうやって」
「あといとしとてとるを連続して言うんだよ」
 飛び出るはお得意のハリセン。
「そんなことは聞いてないの」
「…すいません」
 もう今ではこんなハリセンだって余裕で避けられるし、碧の手首を掴んでしまえば止められる。
 自分が痛かろうが何だろうが、けしてそうしないのは碧がそれを望まないからだ。ああ、変わらないこの力関係!
「――浅見」
「んー?」
「好きな人に好きって言うのにはどうやったらいいのかしら」
 こんな爆弾発言はお断りだった。
 ふざけんな相手はどこの誰だ。幼馴染みという特別に甘えたままこの位置に居続けた自分が悪いことも承知していた。けれど納得のいかないこともある。ずっと見てた。ずっと見てたんだよ。ずっと一緒がいいと思ってた。
(じゃあ何で何もしなかった?)
 馬鹿じゃないか自分。
「一生無理じゃねえの?お前素直じゃないし」
 やっぱり馬鹿だった。
 碧が急に真顔になったので、ああ失敗したのだと悟った。

 今ここで俺を殴ってくれたら一生感謝するよ愛しの幼なじみ殿。
















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