雲を抱く 誰かが言った 私はまるで雲のようだと そんな詩的な(要するに陳腐なロマンチストみたいな)ことを言うバカモノはこの船に乗っていただろうか、一瞬考えてから、ふと思いついた。 「雲」 青空に溶けてしまいそうに薄い雲が、頭上を広く泳いでいる。 「きれいですね」 そう言うのは陳腐なロマンチストで意外とメルヘンチスト、加えて重度のフェミニスト、要するにサンジだ。 「なんか、薄い紗がかかってるような……あ、ナミさんの美貌には負けますけどね!」 調子いいわね、そう返してやると、彼はなんだか照れたように、嬉しそうに笑う。 「ナミさんのことですからね」 もっと余裕ぶればいいのに。 そうすればそこらで声をかけてくる男どもと同じように、軽くあしらってみせるのに。 「ねえサンジくん」 ナミはなんだか泣きそうになって、サンジの頬に手を這わす。 「あたしって雲みたい?」 彼の目が伏せられる。ああ、意外に睫長いんだわ、どうでもいいことばかり頭をよぎる。 「はい。雲みたいにきれいです」 どうしてこんなことで泣きそうになるんだろう。 雲みたい。 雲がきれいとほざいた口で、よくも言ってくれるじゃないの。 なんて男なのよこの素敵ロマンチスト。 「サンジくん」 「はいはい?」 「抱きついていい?」 「……喜んで」 とりあえず、雲みたいにふらふらしてるとか言われなくてよかった。 |
*POSTSCRIPT* 短っ! 今日はもう素晴らしいお土産をたくさんもらっちゃいまして、嬉しさのあまり書きました。 きっとこのときナミさんは誰かに思い切り抱きつきたい気分にさせられたのだろうと予想。 |
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