車とパレード この車は小さくて汚い。 しかも後ろには髪の毛臭くてもさっとしていていつも何考えてるんだかわからない女が座っている。 不機嫌になるな、という方が無理な話だろうよ。 そう思って真山は顔を上げる。 車の中で、あるアパートに入っていく女、それについていく男をじっと見つめる。とりあえず今は目の前のストーカーよりも自分の追っている犯罪、そしてその犯人だ。 「…あれってストーカーですか?」 ワンテンポもツーテンポも遅れた速度で柴田が問う。返す言葉さえ面倒くさい。 「さあな」 「でも、ずっとあの女の人についていって部屋の前に立ってますよ?さっきからずっと見てたんですけど多分あの大きなバッグには小型カメラが」 「お前どういう視力だよ」 「2.0です」 「見えたのかよカメラ?」 「推測です」 これを信用してあのふざけたストーカーを捕まえて勘違いだったら目も当てられない。 「バカじゃないのお前」 「なんでですかー?だってあの人さっきから」 「頼むからもうあんま見るな、な?」 「どうしてですか」 内心ではこの女をはったおしたい。後頭部思いっきり殴りたい。距離的に困難だが。 「そういう恋愛もあるんだろ。他人のことにゃ口出すな」 「そういう恋愛……」 あのセリフをどう思ったのかしらないが、柴田は胸に手を当てて目を輝かせている。 「エクセレント……!!」 「お前おかしいんじゃないの?」 思えばこいつは前からおかしい。 「一歩下がって彼女を見守る愛……素晴らしいじゃないですか!ああいう人は毎日がパレードなんでしょうねえ」 「は?」 この柴田純というどうしようもない世間知らずは、往々にしてわけのわからないことを言う。 「わたし昔父に連れられてパレードを見に行ったんですけど、そのときどきどきしてたまらなかったんです。きっと今あの人もどきどきしてるんでしょうねえ…」 そりゃストーカーは毎日がどきどきだろうよ。 そう思うが、黙っておいてやる。隣りをしばき倒せないことに初めて苦痛を感じた。 「真山さんは最近してないんですかあ?パレードな気分」 ああしてるよしょっちゅう。心の中は毎日毎日パレードだ。 「なんでお前に教えてやらなきゃならないわけ?」 柴田純、お前に言う。これ以上干渉するな。 「なんでですかー?照れちゃってもう」 顔を赤らめるな、キモチワルイから。 「お前にゃ一生わかんねえよ」 パレードごときでどきどきなんてできやしない。 小さく狭い車が揺れた。 目を閉じた先にある闇に、なんとなく焦がれながら。 |
*POSTSCRIPT* 4444ヒットを見事なまでに踏んでくださったカスミンに捧げます! 初挑戦初マヤシバでっす!いやなんか柴田がどうしようもなく難しいし最近見てないから真山さんの口調が微妙〜と思いながらも完成しました…… しょぼくてごめんよ…… というかこれはマヤシバになってるんだろうか…うわあすげえ疑問 こんなのでよかったらどうぞもらってやってください |
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