パーフェクトドリーマー




 無用の夢を見てしまった。
 夢にそもそも意義を見出せないし、それに必要性があるかと問われれば自分の答えは『ノー』しかない。けれど今はそんなことは置いておくことにする。これは夢だ。昔から何度も見た、叶う可能性のすこぶる高い夢。
 だからこそ、これは無用の夢なのだ。そうだ、そうに違いない。あせることもない。が、あせらずにいられるはずもない。
「どうしたの?」
 碧はにっこりと笑う。顔だけ見るといつもとあまり変わったところはない。相変わらず雰囲気と口元だけ緩めて目だけが笑っていない。
「……いや、何でも」
 そうだこれは夢だ。そうでなければ碧が今ここにいる理由が分からない。きっと知らないうちに眠ってしまったのだ。
「すごく久しぶりな気がする」
「何が?」
「お前がここにいるのが」
 ここイコールベッド。所有者は浅見だ。どうしてここに彼女がいるのか、それは彼も知らない。気がついたらそこにいて思わず驚いてしまったのだ。
「それはそうよ。子どものころはよく一緒に寝たのにね」
「甘ったれのバカ君がいたせいだ」
「あら、本当にそれだけ?」
 碧が笑みを絶やさなくなったのはいつごろからだっただろうか。気の強さを隠すようになったのはいつだっただろう。記憶がどんどん曖昧になる。ただ、自分はそんな彼女を見せつけられることのなかった唯一の人間だということに優越を覚えるようになった。いつの間にか。だんだんと。
「違う」
 こんなに素直に喋ってしまうのは夢だからだ。
 浅見は碧の頬を撫でる。顔の輪郭に沿って指を滑らせるとなめらかな肌にめまいがしてくる。碧はくすぐったそうに目を閉じた。
「碧」
 碧は頬を撫でる指に唇を寄せる。髪がしゃらしゃらと手をくすぐるのが気になった。
「碧」
 浅見は碧の肩をつかんで抱き寄せると乱暴に口付けた。求めてやまなかったものが今ここにあることを不思議に思った。碧の唇は柔らかく甘く無骨な舌を受け入れるので、まためまいがした。


 



 *POSTSCRIPT*
 これは実際に夢なのか否かと問われれば夢であるとしかいえませんが。ええ夢オチです。この後浅見さんは夢であることに安堵して二度寝にかかります。夢見ることに手慣れてます。切ない…(笑)
 女だって生臭い生き物であるので甘いだとか柔らかだとか夢見がちな表現があったらそれは全部夢であり幻想です。



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