夢見る林檎





 そうよわたしはスノウホワイト。
 夢見心地で林檎を食べるの。


 昼過ぎのベッドでまどろんでいると、実に贅沢な気分になれる。
 忙しない職場から解放される一時。
 なんだか淋しい気もするけれど、休日は休日。しっかり休まなければ損だ。それにせっかくの休み、しかも一日だけなのだから、出かけないで家でゆっくりしていたい。これもまさしく一つの真理。
 白いシーツの海を惜しんで、ゆるゆると体を起こす。もう十二時過ぎだ。
 まずは朝ご飯。冷蔵庫の中身を見ると、昨日の晩の残り物。それから林檎。野菜も色々あるけれど。すぐになんとかできそうなものはそのくらいだった。
 とりあえず食パンをトースターに入れて、電子レンジには残り物を放り込む。サラダを食べようか、と考えたけれど面倒だからやめた。
 一人のときに独り言を増やすような淋しい生活を送る女にはまだなっていない。
 そのことに少しだけ安心した。
 第一、独り言が増えるような大人しい環境に身を置いていない。毎日毎日叫んでいて、そのうち喉がどうにかなってしまうんじゃないかと、今は本気で心配なくらいなのだ。
 それはきっと、あの男も同じだけれど。
 あっちの場合は働きすぎて筋肉痛の悩みか、と思い直す。毎日毎日走り回って、よくも元気でいられるものだ。もう若くないのに。(こういうと彼はとても怒る。静かに)
 林檎の皮をシャリシャリと剥く。皮むきは好きだ。仕事をしている感じがする。
「・・・・・・会いたいな」
 ああ、独り言言っちゃったわ。でもしょうがない、会いたくなったんだから。
 自分はあの男が好きなんだろうか、考える。嫌いな気がする。好きな気がする。憎たらしい気がする。愛しくてやまない気がする。
 もう末期だわ。でもしょうがない、きっと愛してるんだから。
 シーツの海が恋しいわ。きっとあそこなら夢見ていられた。
 ああ、林檎の果汁が目に沁みる。
 起き上がってしまったことを後悔する。王子様さえ来ていないのに、よくも起きちゃったわねおひめさま。
 ねえ、会いに来て。会いに来て。
 待ってるのよ。会いに来て。


 そうよわたしはスノウホワイト。
 王子様を待っているのよ。

 唐突にチャイムが鳴った。
 期待をもって振り返る。


 そうよわたしはスノウホワイト。
 夢見心地で林檎を食べる。
 
 林檎を食べるの。







 




 *POSTSCRIPT*
 ・・・なんだろうコレ。最初に思いついたフレーズが「そうよわたしはスノウホワイト」次に思いついたのが「夢見る林檎」で、あとはつれづれに。
 なんだか青すみっぽい気がしないでもないのでどうしようかとも思ったのですが。しかしすみれさんはこんなにオトメティックでもないでしょうよと思いましてオリジナルに。青すみ好きな方はレッツ妄想!



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