She say "si"




「どういうつもりですか」
「どうもこうも。見ればわかるだろう」
 日向に寝転がっているロイはまるで猫か年寄りだ。リザはそんなことを考えながら彼を見下ろす。
「サボりですかサボりですねそれでは私は仕事をしない上司である貴方に堪忍袋の緒を切らしてしまってつい発砲してしまっても罪にはならないと」
 そう言って銃を取り出すと流石にロイは起き上がった。
「いや待って待ちたまえ中尉!そんなわんぱくな!」
「小さいころおじい様に言われたことがあるんです」
「とてつもなく不吉な予感がするがあえて聞こう」
 冷や汗をだらだらと流してロイは笑う。ただし口元だけだ。目は笑っていない。
「小さいころの私はひどくお転婆な娘で。射撃ばかりしていて家族を困らせていました」
 なんとなく予想ができた。子どものころからこうだったのか彼女は。納得だ。
「そしてある日すべて諦めたおじい様が仰ったんです。『お前は銃に生きなさい』と」
 なんて余計なことを言ってくれたんですか将軍。
「それは素晴らしいな。それがなければ今の君はいないわけだし」
「そうでしょう?おじい様は更に言ってくれたんです。『女の子は元気すぎるくらいが丁度いい』と」
 これは愛の鞭ととっていいのだろうか。それともただの鬱憤晴らしだろうか。彼女が鬱憤を晴らせるのはここにいる限り自分だけだという自負がある。他の連中が相手をするには、彼女は強すぎる。
「……で、結論は」
「だからここで発砲してもいいのではないかと」
「それはよくない絶対よくないごめんなさい見逃してください勘弁してください」
「見返りは?」
「えーと…じゃあ将来君と結婚するから未来の夫を傷ものにするようなまねは」
「アホですか」
 リザは銃口をロイの額にゴッと押し付ける。
「そんな味気のないプロポーズを受ける女がどこにいると?」
「ここにいるだろう」
「私は一言もイエスは口にしておりません」
「君は断らないだろう」
「何を根拠に?」
「私は君に好かれている自信があるよ」
「…あなたは」
「ちなみに私も君を生涯愛する自信がある。問題なかろう」
 ロイはリザの手をとって銃口を下げさせる。このままでは危なくてまともに話もできない。
「時間稼ぎですか?」
「いいや事実さ」
 サボタージュを見逃すことへの見返りは後々いただくとしても、いい気分はしなかった。丸め込まれた自覚がある。
「誓いのキスでもしようか」
「嫌です」


 



 *POSTSCRIPT*
 プロポーズはふざけた冗談です



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