あなたのとりこ




 あなたが男である時わたしはどうしようもなく女なのでわたしはどうにも途方に暮れてしまうのだ。けれどもあなたはいつまでもどこまでも飄々とわたしを奪ってしまうのでやはりわたしはいつまでもあなたの虜でしかないのだと思う瞬間。
 
 その、瞬間。

 唇に温もり。
 絡ませる舌に快感。
 腕の力強さと熱さに完敗。




 キスをしたら蕩けそうになった。とりあえずそれはいつものこと。
「ん・・・っ」
 キスの最中のくぐもった声が好きだ。この声を聞き取るためだけに、頭の中に冷静な部分を少量作る。それが理性というものなのだろう。いささか動機が不純だが。
「なんですか?」
「いや別に」
 怪訝な顔をしながら、ホークアイは枕に顔を埋める。
「今日は泊まっていきたまえ」
「もとよりそのつもりです」
 簡単に言い返されてしまって――しかも望み通りのことを!――気分が萎えた。ここで一戦やらかすのもいいと思ったのだ。最近は彼女とささいなケンカをすることさえ楽しくてしょうがない。もはや病気じゃないか。
「・・・なんですか」
 その代わり。
 首筋に顔を埋める。いいにおいがした。理性から一つ冷静さが消えた。
「キスしようか」
 耳にくちづける。彼女はこれが『おねだり』だと理解してくれているだろう。
「さっきしたじゃないですか」
「もう一回」
 君とのキスは何度でもしたい。
 そう思う自分。おかしいんじゃないか。
「もう、一回」
 今度は額。許してくれるまで唇は避けて、何度でもキス。
「いやです」
 こうなると強情になるのはいつもと同じ。
 笑い出しくなったけれども、笑い出すと怒られる。
「大佐」
 次は頬。
「・・・大・・・っ」
 次は顎。
 ちらりと見える鎖骨がやけに色っぽい。
 次は鼻の頭にキスしてみた。
 唖然とした反応が実にかわいかったので、そろそろ我慢の限界がきた。
「しょうがない人ですねあなたはっ・・・」
 まんまと成功。

 唇にぬくもり。
 絡ませる舌に快感。
 腕の柔らかさと熱さに完敗。




   あなたの言いなり通りになってしまうわたしとわたしをいつまでもどこまでも求め続けるあなたは今のところ非常に上手くやっていて、けれどわたしはその瞬間が信じられないのでいつも疑いながらあなたにキスされて抱かれて眠るのだ。けれどもあなたがわたしを求めるとき最終的にあなたを拒むことはわたしにできるわけはないのでやはりわたしは結局どこまでもあなたの虜だと思う瞬間。

 その、瞬間。
   


 




 *POSTSCRIPT*
  深由さんからのリクエスト、ピロートークで!
 わかりづらいモノを捧げ物で書いてしまって申し訳ない。
 えー、最初と最後が中尉視点でその間が大佐です。ひいわかりづらい上に何だよその書き方!いやでも、でもね、おもしろくていいかなとか思ったんですよ・・・
 あなたのとりこ。どっちもどっちだってことで。





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