トツゲキシステムオールグリーン




 校門の前でヤクザ。
 ごくごく普通の高校で、ごくごく一般的な女子高生が遭遇するには少々、いやかなりとんでもない光景だ。しかもそのヤクザは非常に強面だった。一目見れば堅気の人間ではないことは明らかである。さすがに誰もがそこを避けて通る。―― 一人をのぞいて。
「何してるのよ」
 梁川蛍はごくごく一般的な女子高生であったが、神経と経験と度胸と腕っぷしの強さはまともではなかった。
「どうも」
「何考えてるわけ!?学校に来るなんてどういう…」
「蛍」
 金髪美人が定番の黒塗りベンツから顔を出した。しかしいくら美人だからといえども善人であるとは限らない。外見に惑わされるベからず、この男――湖条の腹の中はイカスミも真っ青なほど真っ黒だ。
「しばらく顔を見ないと思ったら…」
「寂しかったのか?」
「この上なく平穏で心安らかだったわよっ!」
 蛍は湖条をにらみつけた。
 しかしそれすら彼にとっては問題にならないらしい。
「乗れ」
「知らない人の車には乗っちゃいけないのよ。小学生でも知ってるわ」
「…知らない仲でもないくせに」
 くすりと笑う男はこの上なく憎たらしかった。
「あたしはそんなに暇じゃないの」
「お前は俺に恩があるんじゃないのか?」
「ないわよ」
 そうだ。あれに礼なんか言いたくない。言えることじゃない。
「あんたがどうしたいのか知らないけどね、あたしはそっちには染まらないわ。絶対に」
「そんな顔でよく言う」
 湖条は笑って、車のウィンドウを閉じながら言った。
「今日のところは見逃してやるよ」
 何をしに来たのかと言いたかったけれど、どうせもう巻き込まれてるに決まっている。
 この男は用もない相手のところにわざわざ来るような、そんなことはしない。
「ふざけんなー!」
 せめてもで怒鳴りつけてやると後ろから焦ったような声が聞こえた。どんなに急いだって、すべてはもう遅すぎる。




 



 *POSTSCRIPT*
 子ババです。正式名称キッズジョーカー。湖条を出せと言われたので意味のない登場をしてもらいました。あれこれうちのサイトにないじゃんと書いた後に気づきました。そういえば。プラチナガーデンはあるのにね!



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