voce 声が聞こえたから振り向いた。 そしたら遠くにあの人がいた。 走らずにはいられなかった。 「だから!俺が今までどれっっっだけ・・・!」 「今回は、借りはないはずだぞ」 ロイは机越しのエドワードに目をやる。 「私は忙しいんだ。そう情報をほいほいやれるわけでもない。ネタが尽きることもある」 「ああ?東部で厄介事は日常茶飯事だ。何かあるだろ何か!」 「君も大概口が悪いな」 「大佐ほどじゃねえよ」 ロイの暴言はねちっこい。エドワードは思う。人よりよっぽどイイ性格してやがるくせに。 「お二人とも」 場違いな、凛とした声が響いた。 「喧嘩している暇があるんですか?」 厳しいけれど正しい言葉にロイもエドワードもつい黙ってしまう。 「大佐もエドワード君をからかわないであげてください。本当は嬉しいくせに」 「だ・・・誰が嬉しいと・・・!」 「大佐です。たまにはまともに私達の相手をしてくれてもいいものを」 エドワードはリザとロイを交互に見やる。 リザは至極涼しそうな顔でロイに向かっているものの、ロイは負け気味だ。まあ遊んでばかりいないで仕事をしろと言われていれば仕方ないだろう。 「おや、相手をして欲しかったのかね?ならば今夜にでも」 少しでも優位に立ちたいかのように、ロイは笑って言い返す。 「意味を取り違えるとろくなことになりませんよ。それにどうせ今夜はデートでしょう。女性を待たせるものではありませんよ」 しかし彼女に敵うはずもなかった。 「・・・・・・わかったよ」 溜息をついて小さく呟いたロイに、リザが滅多に見せないような顔で微笑んだのが印象的だった。 「では、私はこれで」 「あ・・・!」 「ああ」 リザが執務室を出て行った。エドワードは呼び止めようとしたが、結局それはかなわなかった。 「・・・鋼の」 「何だよ」 「後で中尉に礼を言うんだな」 「分かってるよ!」 「もう少し可愛げのある受け答えはできないのかね」 「できねえ」 拗ねるエドワードにロイは笑って、ファイルを差し出した。 「これか?」 「ああ。生体錬成についての報告書だ。参考にするといい」 「やっぱり何かあるんじゃねえか」 「すんなり出しては面白くないだろう。ただでさえ中尉が君を庇うのが面白くないことこの上ないというに」 「・・・・・・大人げねえ」 「やかましい」 顔をしかめるロイに、エドワードは笑うこともできなかった。 執務室を出て左、とりあえず弟を連れて早速行こうとしていたエドワードは逆方向から聞き覚えのある涼しい声を聞いた。 思わず立ち止まる。 そして振り返る。 少しの逡巡、走り出さずにはいられなかった。 『・・・・・・わかったよ』 その後に彼女が見せた笑顔が頭から離れない。 『後で中尉に礼を言うんだな』 あの男にはいつまで経ってもかなわないのではないか、そんな思いをさせられるようなセリフだった。 走り出してからまだ2、3歩。立ち止まる。 声が遠くに行ってしまう。行ってしまう。 追いかけられない。 エドワードは踵を返して走り出した。まだ、追いかけることはできないのだ。それに気づいてしまったことが悔しかった。 |
*POSTSCRIPT* 83000hitのキリリクでエドアイ。 初めて書きましたエドアイ。 苦戦しまくってしまいました。その割に短い・・・ 難しいよー! それでは、83000hitありがとうございました! |
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