司令部は当然の如く慌ただしかった。 そして司令官であるロイ・マスタングはこの上なく不機嫌だった。 彼の部下達は軽口を挟むこともできずに黙々と仕事をこなすしかなかった。が、愚かにもその空気に耐え切れずハボックが口を開く。 「あ、あのー…」 「何だ」 おそらく彼はハボックに一番怒りを感じているのだろう。しかし彼がそれ以上に憎んでいるのはきっとこの事件を起こした犯人だ。 「あの後結局おあずけで」 すか?残念っスねー。言う前にハボックの眼前には発火布のはめられたロイの右手があった。 無謀にもテンションを上げようとした彼の試みはあえなく失敗に終わった。 (あーあ馬鹿め) そこにいた多くの感想は一つだった。 「や、あのだって黙ったままじゃ逆に仕事はかどらないですよだから」 「喧しい。よりによってお前が騒ぐな」 不機嫌なロイに敵はいない。 「いいじゃないですかいつでもできるんでしょう?」 「……いつでも」 ロイがハボックをぎろりと睨む。怖かった。 「いつでも?いつでもと言ったかこの口は。いつでも好きなときにできるような仕事だとでも?実際におあずけくらったことが一回や二回だとでも思ってるのか?第一!あの中尉相手にそんな展開に持ち込めることが今までに何回あったと思ってるんだ。出会ってから今までで三回だぞ?三回!俺がいつもどれだけ苦労して」 (数えてんのかよ) しかも俺、素に戻っている。 それにしても出会ってから今までで三回とはどういうことか。イシュバール殲滅戦が6年前、そのころもしくはそれ以前からの付き合いのようだから―― 「三回って少っ」 「やかましい。この件の報告書はお前だ」 「げ」 なんとなく予想はしていたことだったが、実際言われると嫌になる。どんな結果になるかもわからないのに。 第一怒りすぎなのだこの男は。司令部の花、美しく潔い中尉を独占しておいてまだ更にワガママを言う。せめて仕事くらい真面目にやれ、と言いたかったが、ハボックはそれをはっきりと言えるほどの階級ではなかったし、今の彼はこれ以上ないほどにしっかり仕事をしている。そう、これ以上ないほどに。 理由は単純だ。 指の先から燃やし尽くしてやる馬鹿め。 おあずけを喰らう羽目になった原因を彼が軽く許してやるはずはない。 「大佐、おふざけはそれくらいにしてくださいね?」 いつからそこにいたのか、ドアを背に立っていたリザがにっこり笑っている。 ……道理で誰も何も言わないわけだ。 ハボックは絶望的な気分でロイを見る。しかしロイは彼以上に絶望的な顔をしていた。 この世の終わりはここにある。 |
*POSTSCRIPT* 今回短いなーすいません。 っていうか数えてるってキモイなー大佐。ねえ、超キモイ。 次回ね、どうしようか。とりあえずなんか盛り沢山にしたいからパーティに潜入捜査でもする?えーパーティいいじゃなーい。こうなんていうか伏線も何も張らずに三流!って感じの事件でいこうと思います。だからさ、細かいの考えるより気が楽だしさその方が。読むのはちゃんと作ってあるやつ大好きですが さて潜入捜査。やっちゃうよ! |
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